…風を受けながら、病院からの坂道を下る。
「きぃもちぃーっ!やっぱりシャバは最高だねっ!」
「…それ、務所帰りのセリフだぞ」
「気にしない気にしないっ」
風と車輪と、明日可の声。
明日可を乗せたこの自転車は、ようやく元の形に戻れたような気がした。
明日可を乗せて、完全体になる。
僕一人じゃ、意味がないんだ。
僕の顔はゆるみっぱなしだった。
嬉しくて嬉しくてしょうがない。
自然と、ペダルを漕ぐ足にも力が入った。
…ゆっくりと、自転車を止める。
いつものように、ストンと明日可が降りる。
僕もその場に自転車を止めた。
視線は二人とも、同じだった。
「…すげぇ」
この言葉が、全てを表していた。
いや、これ以外に表現ができなかったんだ。



