「…よくそんな台詞言えるね」
ふいに明日可が呟いた。
「うるせ…」
顔をあげた僕は、ますます顔が赤くなるのがわかった。
…明日可の顔も、真っ赤だったからだ。
「…何赤くなってんだよ」
「シュウがそんなこと言うからじゃん」
顔の赤い2人の目があう。
どちらからともなく、ふっと吹き出した。
「あは、バカップルみたい」
「はっ、充分バカップルだよ」
病室に響く止まらない笑い。
幸せな、瞬間。
ふいに僕は笑いを止めた。
それに気付いた明日可も止める。
…声の無くなった病室で、僕等は小さくキスをした。
唇を離すと、蝉の声が僕等の間に響く。
夏の中でのキスは、初めてだった。
「…一緒に行こうな」
僕が呟く。
「…うん」
明日可が答える。
…リンゴのみずみずしさで満たされた病室で、夏が終わりかけていた。
秋の入り口を、感じていた。



