コスモス


「土産?」
「うん。だって前は、よく写メ撮ってきてくれたじゃない?コスモスの」
「あぁ…」

僕は、シャーペンをくるりと手の上で回した。

「行ってないの?コスモス畑」
「いや、んなことねぇけど…いや、行ってないか…?」
「どっちよ~?」

明日可が僕の方に体を向けた。
髪をくしゃっとしながら、僕は渋々答える。

「…こないだ行ったらさ、結構コスモス咲いてたんだ。満開、とまではいかねぇけど…」

不思議そうな顔で、明日可は見つめる。

「だったら…」
「いや、だからさ…その日から俺、行ってねぇんだ。コスモス畑」
「なんで?」

黒目がちの明日可の瞳が、僕の顔をのぞき込む。ますます言いにくい。

「だから…約束したじゃんか。退院したら、一緒に見に行こうって」

俯いたまま、僕は答えた。

「初めてみる満開のコスモスはさ…明日可と一緒にみてぇなぁ…って」

俯いていて顔はわからないかもしれないが、赤くなった耳は隠せない。


…こんな恥ずかしい台詞、よく言えたもんだな。