コスモス


「ミキんちって、明日可んちに行く方向でいいんだよな?」
「うん。途中のマンション。」

カラカラと、自転車のタイヤの回る音が夜道に響く。
僕達の足音がそれに重なる。

「これ、明日可がつけたんでしょ」

荷台のクッションをつまみながら、ミキは言った。

「…男の子にも恥ずかしくないように、緑なんだってさ」
「あははっうける~っ」

…次の瞬間、横を凄いスピードで車が通り抜けた。

ひやっ、とミキが叫ぶ。


「…っあっぶねぇなぁ~っ」

僕はとっさに片手でミキを引き寄せた。

「こっち、歩けよ」

そのままミキを歩道側に引き寄せる。

「…ふぅん。一応女の子扱いなんだね」
「一応って何だよ」
「さっきミキが言った言葉だしっ」

クスッとミキが笑った。

そのまま2人は歩き始める。

再び車輪の音が耳につく。


「…その荷台…」
「え?」

ミキがふいに口を開く。

「…明日可の特等席なんだね」
「あぁ~…そう…なるのか?」
「のろけ?」

「うるせぇよ」と言いながら、僕はミキの髪をくしゃっとやった。
ミキは声をあげて笑う。


「あ、ここでいいよ。もう家そこだし」

不意にミキは立ち止まった。
その指が指差す方向には、大きなマンションがある。