……………


「楽しそうじゃん。何かあった?」

赤信号を待つ車の中で、MDを入れながら男性が明日可に声をかけた。

「ん?…ちょっとね」
「意味深」

ははっと笑い、男性はMDのスイッチを押した。

流れる曲はマルーン5。
雨の中のサンデーモーニング。

「学校、楽しいならよかった」


彼の言葉に、明日可は小さく微笑む。
そのまま窓に視線を移した。


青になり、車は水しぶきをあげて走り出す。
灰色に染まった街が、ゆっくりと流れ出した。





「スガワ、シュウヘイ君」






明日可の小さなつぶやきは、水しぶきと曲の音にかき消されていった。