…口の中で、何度も何度も呟く。
明日可…明日可…
もう、何が起こったのかはっきりしていた。
カシャンと音を立てて、プールの扉を開ける。
遠くで、救急車の音が聞こえた。
駐車場へと、必死に走る。
全力で泳いだ後なので、時々足がふらついた。
それでもひたすら足を前に運ぶ。
頭には、明日可の顔だけが浮かんでいた。
『がんばって』
「…明日可っ!」
人形の様に抱かれた明日可は、救急隊員の人に渡されていた。
救急車に、明日可の担任とミキが乗り込む。
「明日可っ!」
救急車に近付こうとした僕を、ヒロミが止めた。
「離せよっ!」
「落ち着けっ!お前その格好で病院に行くつもりか!?」
そこで初めて気付く。僕は、プールから上がったままの格好だった。
目の前で、ゆっくりと救急車の入り口が閉まる。
明日可の口に酸素マスクが被される瞬間が見え、バタンという音が響いた。
…まるで、人形がケースにしまわれるように。
明日可の乗った箱は再びサイレンを鳴らし、僕から遠ざかっていった。
音が、徐々に音程を変えていく。
遠ざかる明日可を、僕はただ見つめることしかできなかった。



