知ってた。 本当は泣きそうだった。 「バスケ部の柳下壱稀って知ってる?」 放課後に2人。 ちょうど1年前の夏。 瀬璃は確かに、そう言った。 ちょっぴり頬を火照らせて、 いつもより汐らしくて、 目線は下のほうをキョロキョロさせていた。 「んー?知ってるよ」 別に興味なさ気に、というか興味も無く。 ただ頷くだけで、瀬璃のよそよそしい態度が気になっただけだった。