唖然としてしまった。春貴に見惚れていたわけじゃなくて、ただ春貴の勇気に驚いたんだ。
「あ…あたし?」
「はい」
手を口元に当て、目を丸くするお姉ちゃん。そして、
「うわぁ…ありがとう」
ポロッと溢れたお姉ちゃんの素直な本音。まるで静かに雨が落ちてきたみたいに。
「ありがとう…ありがとう」
ひたすら、何度もありがとうを繰り返すお姉ちゃん。だけど、あたしには何度もお礼を言う理由が何もわからない。
「春ちゃんの気持ち、すっごく嬉しい。……だけどあたしには彼氏がいるの」
「………知ってます。でも…」
少しの間があってから春貴が口を開いた。
「それでも…優帆さんに気持ちを伝えたかったんっす」
春貴の目から、お姉ちゃんを好きな気持ちが溢れている。なんだか見ている側も切なくなる。


