声だけじゃ春貴の様子が上手く分からない。散らかる課題を残し、少しだけ部屋の扉を開けた。
ドアの隙間から、デート帰りのお姉ちゃんを見つめる春貴の姿があった。
「まだ……気づいてくんないんすか?」
「えっ?何に?あっ、お腹が空いてること?」
「………違うっすよ」
春貴の右手が握りこぶしを作っている。だが、お姉ちゃんには見えない角度なのか気づいていない。
気のせいかもしれないけど、春貴が何かを決心しているように見える。
「優帆さん」
「なぁに?」
「言ってもいいっすか?」
「?」
─────もしかして
「………好きなんです」
下唇を噛みながら、お姉ちゃんに気持ちを伝える春貴。
「俺、ずっと優帆さんのことが好きだったんっす」


