大好きな君にエールを*番外編






野球のスタートを切れたなら、もう1つスタートを切らなきゃならないことがある。


「なぁ…康也」


「なんだよ、春?」


「それ、本気か?」


俺の手の中にあるモノを指差して力なく笑う春。俺は当たり前だ、と頷く。


「…手紙で呼び出しとかウケる」


「うるさいっ。緊張すんだよ」


「俺に頼めばいいのにー」


「春に頼むと春伝いで、俺が倉橋を好きっていうのがバレそうだから…嫌だ」


梅雨の時期も終わり、夏が始まろうとする昼下がり、俺は倉橋の靴箱に手紙を入れた。


『放課後、教室に来てください』


……あ。


入れてから気づいた。名前…書いてねーじゃん。だけど書かないのもありかなと思った。


それから1日中、そわそわしていた。落ち着けるわけがない。告白する前は誰だってそわそわするはずだ。