そんな姿を見て、さっきのプライドとか言ってた言葉は何だったのよ、ってツッコみたくなった。
でもね、感動してるんだ、今。
泣けるってすごいね。それも1人じゃなくて、誰かと泣き合うことって素敵だね。
花龍にいなかったら出会っていなかった2人。キャッチャーという接点で、他のチームメイトとは別に先輩後輩で強く結ばれた想い。
「でも…やっぱり俺も出たかったなぁ…高校最後 の甲子園。大好きなお前らと一緒に戦いたかっ た」
シゲの言葉は、重みがある。
じわじわとあたしにまで伝わってくる。
シゲは小さい頃から、甲子園甲子園って騒いでた。夏になるとテレビに釘付けで、なかなか離れなかった。
勉強よりも野球。時には友達と遊ぶことを優先していたけど、家に帰ると素振りをして野球を忘れることはなかった。
『俺、花龍に行く』
中3の夏、一緒に夕暮れの道を歩いている時にシゲの口からこぼれた言葉。離れるなんて嘘だと思った。
離れたくないって思った。


