私はすぐにあるイベントが浮かんだ。

……たぶんチサも浮かんでるはず。


「思い出した!バレンタインっ!」


蓮さんはスッキリした顔で、手の平を拳で叩き、バレンタインを思い出したと同時に別の何かも思い出したのか、肩を落とした。


「そうだ……バレンタインの時も忙しくって来れないんだった……」

「えー!じゃぁ蓮さんにチョコ渡せないってことですか!?」


チサが困ったような顔をすると、その顔を見て蓮さんも申し訳なさそうに眉を垂れる。


チサ、蓮さんにチョコあげるつもりだったんだ。

針で刺されたようにチクリと胸が痛む。


……別に私には関係ないし。無縁のイベントなんだから。


自分に言い聞かせて胸の痛みを紛らわせていると、蓮さんはチサに向かって両手を合わせた。