「送ってやるよ。ほら!」


そう言ってゴウはヘルメットを忍に投げて寄越した。

忍は内心ホッとした。

堤は嫌いではないが、一緒に帰るとなると警戒してしまう。

その点ゴウの方が信用出来る。


「ありがとう!じゃあお願いしようかな~

堤くん、またね」


忍は堤に手を振ってゴウのバイクに跨った。


途中、信号待ちで一旦停車するとゴウは後ろを振り返った。


「助かったって顔してたな?」

「え!?そんなに顔に出てた?」


そう答えた忍を見てゴウは少し笑った様だった。

家に着くと去り際にゴウは「気をつけろよ」と言った。


「あの冴えない男、下心丸出しだったぜ?」

「…だよね…」

「俺達を頼っても構わないから、いつでも困ったら言えよ?」

「ありがとう!」


ゴウが軽く手を上げて去って行くのをしばらく眺め、溜め息をついた。


「困ったな…」


忍はポツリと呟いて家に入った。


忍に言い寄って来る男は堤が初めてではなかった。

特に右京が日本を離れてしばらくは頻繁に声をかけられた。


セリに言わせると“あわよくばと思っている”らしい…


「なんで私なのよ…」


自分の部屋に入ってすぐベットに寝転がった。



イライラした気持ちを落ち着けるため着替えて道場に向かう。