忍のバイト先は駅から近いので意外と忙しく、特に夕方はまともに定時であがれた試しがない。


この日も定時を30分程過ぎてタイムカードを押した。


だいぶ日が短くなり外は既に暗かった。


こんな時、前までなら右京に電話すればすぐ飛んで来てくれたのに…


そう考えると少し寂しさが増した。
忍はそんな考えを振り払うかのように一つ深呼吸をして歩き出した。


「忍ちゃん!」

「堤くん!お疲れさま、今帰り?」

「うん、ちょっと残業~」

「同じだ~」


クスリと笑う忍に堤も微笑んだ。


「途中まで一緒に帰らない?」


忍は一瞬考えてから「いいよ」と返事をした。


「忍ちゃんって彼氏居るんだっけ?」

「え?あ、そうか堤くんは知らないんだ…今遠距離なの。」

「へぇ…どんな人?」

「そうね~…ナイトみたいな人。強くて優しくて可愛くて…」

「…絵に描いたような彼氏だね~…」

「ふふ…そうかも!」


右京を思い出して忍は少し切ない表情をした。


「…ねぇ忍ちゃん。もし良かったら…」


堤が何か言いかけた時、一台のバイクが二人の脇に停車した。


「よぉ、バイト帰りか?」

「ゴウさん!なにしてるの?」

「axelに行く途中だ。」


嬉しそうに強面の男と話す忍を堤は驚いたようにじっと見つめた。