潤君は右京がこの部屋に結界を張ったと言ってたじゃない…!
自分に「大丈夫」と言い聞かせる。
突然隣の部屋が騒がしくなった。
何かが倒れ…壊れるような物音が聞こえる。
─怖い!怖い!怖い!
恐怖で膝がガクガクと震え立つことさえ儘ならない。
ついに部屋のドアがバンッ!!と大きな音を立てて半壊した。
部屋の灯りが消え…
入口から霧が立ち込め視界が悪い…
部屋の中は薄暗く、窓から射し込む月明かりだけが頼りな状況下で忍はただ右京を呼んだ…。
右京…右京!早く…!
多分声が出ていない…
右京に忍の叫びは届いていないかもしれない…
霧の向こうに大きな6枚の翼が見え、忍はホッとした。
「右京!」
やっと動いた足を彼の方へと数歩進めたところでピタリと止まった。
違う…!…右京じゃない!!
「だ…誰!?」
忍は震える足をゆっくり後退させた。
『…この女か…?』
─ハイ、間違エアリマセン。
6枚の骨張った翼を持つその悪魔は真っ赤な冷たい瞳を忍に向けた。
その足元に無数の蛇が這い、シュルシュルと舌を出しこちらをじっと見つめた。