とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~






その様子に司祭は『どうしました?』と首を傾げた。


言葉が出ない右京の代わりにニックが司祭に話しかける。



『そ…その神は何て言っていたんですか?』


『あの本を盗みに来る輩が現れるから隠せと…』



…なんで…早すぎる…!!




いくらなんでも気付かれるのが早すぎる事に右京は焦りを感じた。



『まさか…クロウ!!』


『牧師様っ!今は何処に!?』


『わっ…私の自室の床下です!』


『それ何処!?…ほら急いで!』



右京とニックに担がれる様に廊下を疾走する。


すれ違う修道女が慌てて道を開けた。



司祭の自室だという部屋まで来ると、彼はよろめきながらベットの近くに敷いてあるラグを捲った。



床板が一ヶ所外れてそこに本一冊がやっと入る位のスペースがあったのだが…



『…ない…!確かに今朝ここに…』


『クッソ…!』


『先を越された…!』



ニックは悔しそうに壁に拳を叩きつけて右京を見た。



右京は目を閉じて行き場のない怒りを押し殺しているのが判る。


微かに辺りの空気の流れが変わり、一瞬風が吹き荒れた。



『…クロウ…』



ニックに右京を宥める様に肩を叩いた。



『…すまない…つい…』



そう言って部屋を出ていく右京の背中を見送る。



『…いったい…何が…?』


『ああ…ただのサイキッカーだから気にしないで。』



ニックは不思議がる司祭にそう言うと右京を追った。