きっと俺がそんな事を考えてるなんて人間達は気付かないだろう。
右京は守るべき者達を守れるのなら、それでも構わないと思った。
今ならルシファーが右京の前に姿を現すのは不可能だが、あの古文書で翼を手に居れたら…
考えただけでゾッとする。
翼は移動手段なだけではない。
力の増幅…権力の象徴…それらはルシファーには不可欠な皇帝としての地位の確立を意味している。
…ダメだ…決して阻止しなくては…!
例え俺の身が朽ちたとしても…
守るべき者達は守り抜こう…
『クロウ…』
マリア像を見つめ考え込む右京を、ニックの声が現実に引き戻した。
『牧師の話だと、“題名のない本”は別の場所で保管しているらしい。
…もうしばらく待ってくれってよ。』
『そうか…わかった』
ニックは右京の隣でマリア像を眺めたまま黙って佇む。
しばらく沈黙が続き、ニックは気まずさを感じた。
先に言葉を発したのは右京だった。
『…翼ってさ、天界で産まれた時はみんな一対だけなんだ…』
ニックは右京の話を黙って聞いていた。
『…なんで俺には三対の翼があると思う?』
『え!?…』
ニックはうーんと頭を捻って考える。

