とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~





きっと俺がそんな事を考えてるなんて人間達は気付かないだろう。



右京は守るべき者達を守れるのなら、それでも構わないと思った。



今ならルシファーが右京の前に姿を現すのは不可能だが、あの古文書で翼を手に居れたら…



考えただけでゾッとする。



翼は移動手段なだけではない。


力の増幅…権力の象徴…それらはルシファーには不可欠な皇帝としての地位の確立を意味している。



…ダメだ…決して阻止しなくては…!



例え俺の身が朽ちたとしても…


守るべき者達は守り抜こう…




『クロウ…』




マリア像を見つめ考え込む右京を、ニックの声が現実に引き戻した。




『牧師の話だと、“題名のない本”は別の場所で保管しているらしい。

…もうしばらく待ってくれってよ。』


『そうか…わかった』




ニックは右京の隣でマリア像を眺めたまま黙って佇む。


しばらく沈黙が続き、ニックは気まずさを感じた。


先に言葉を発したのは右京だった。



『…翼ってさ、天界で産まれた時はみんな一対だけなんだ…』



ニックは右京の話を黙って聞いていた。



『…なんで俺には三対の翼があると思う?』


『え!?…』



ニックはうーんと頭を捻って考える。