聖堂にはまだ人がそこそこ多い。
右京は入口から様子を伺う様に眺め、しばし考えた。
後ろにニックの気配を感じて振り返った。
『ニック。本が何処にあるか牧師に聞いてこれるか?』
『…ああ…それくらいしか俺らには出来ねーし…』
含みのある言い方に右京はピクリと眉を動かした。
ニックはそれに気付かないフリをして牧師の居る方へと歩いて言った。
右京はちょっと溜め息をついてから元々それが隠されていたマリア像に歩み寄った。
あれ以来動かした形跡がない…
となると他の場所か…
もしかしたら封印するより、処分してしまった方が良いのかもしれない…
さっきのニックの反応を思い出してそんな考えも浮かんだ。
彼は恐らくあの本の封印にも反対なのだろ。
確かに歴史的観点から見れば貴重なのは間違えない。
だが問題は内容なのだ!
彼の内心はそれを解読したいという願望と好奇心でいっぱいだろう。
それがどれほど危険な事か気付いていない。
だから俺が居るから大丈夫だなんて楽観的な言葉が出るんだ!
右京は人間の浅はかさに不安を感じずには要られなかった。
だが人間は過ちを繰り返す。
それはいつの時代でも同じ事だ。
そこに自分が居れば手を差し伸べる事くらいは出来る。
…自分が居れば…
それもルシファーが相手となると、消えるのは自分かもしれないのだ。

