右京の元にバジリスクの使いが現れたのはその日の午後だった。
カァカァと煩く鳴く一羽の烏は先日の鳶と同様、アパートの窓を叩いた。
それがバジリスクだと気付いた右京は窓辺に身を乗り出して腕を伸ばす。
その様子を見てニックと忍は一瞬ギョッとし、烏と会話する右京を黙って眺めていた。
『…なるほど。ご苦労だった。』
右京がそう告げると烏は艶やかな漆黒の翼を羽ばたかせて去って行った。
『なんだ…ありゃ…』
『バジリスクだ。挿絵の件を伝えてる様に虎太郎が指示したらしい。』
“なんの”と言わなくても例の本だと気付いたニックは身を乗り出した。
『なんて言ってた!?』
『かなり事態は深刻らしい…』
右京がバジリスクの話を一通り話すと二人は言葉を失った。
『その昔話が本当なら…ルシファーは翼がないって事か?』
『俺が最後にルシファーを見た時は翼を持っていたが…』
もう数世前の話だが一度彼をタルタロスに送った事がある。
その時の彼は確かに翼を持っていた。ゴツゴツと骨張った翼を…
『タルタロスで何かあったのかもしれない…』
自分の役目は門番である為、門の向こうは管轄外である。

