忍の体をスポンジで洗いながら右京は話に耳を傾けた。
「牧師の話が本当ならやっぱり“ヴォイニッチ手稿”は必要になるな。」
「近いうちアメリカ行かないとかも。」
「ダメ!あの男と二人でアメリカだなんて…」
「言うと思った…ホント心配症ね~」
「あいつ一人でアメリカでもアフリカでも行きゃーいいんだよ…」
「駄目よ!彼が仕事しなかったら担当の私が責任を問われるわ!!」
忍はふてくされる右京の顔を泡だらけの手で挟んだ。
「俺も忍と一緒に行きたい…」
「バカね…子どもみたいな事言わないでよ…」
忍の甘いキスに酔わされる…
「…好きだよ、忍…」
忍は返事の代わりにもう一度右京にキスをした。
「ねぇ…出ない?」
「俺、誘われてんの?…」
「じゃなくて、のぼせそうなの!!」
右京の鼻を軽く摘まんでから忍はバスタブから出て行った。
独りお湯に浸かりながら忍の話を思い返してみた。
「“解読させない為”か…」
自分に起きた異変と関係がある気がする。
今になって本の中身を見なかった事を後悔した。

