『ですがここまで手の混んだ方法で書いたものです。


そして鍵である“題名のない本”は聖堂で保管されているのは事実。


となると“ヴォイニッチ手稿”の内容は…』


『宗教的ものとみて間違いない…と?』



ニックがそう言うと司祭は『恐らく』と頷いた。



『それにしても、解読させたくないなら何故“鍵”を破棄しなかったのでしょうね。』


『以前、一度だけ“ヴォイニッチ手稿”を見た事があるんだが、筆跡は明らかに数名のものがあったよ。


それから考えて執筆したのはグループだったんだと思う。


その中で意見が食い違ったと考えれば破棄しなかった理由も納得がいかないか?』



内部抗争って事ね…



『…なるほど。ありえますね…』



司祭もその仮説に同意見らしい。



『牧師さま。この資料、画像に収めさせて頂けませんか?

記事にはこちらの名前は出しませんし、事前にお見せします。』



司祭は低く唸りながら悩んでいる様子だった。



『私からもお願いします!
担当として決して牧師さまの意に反した記事にはさせません!』



二人の根気に負けたように司祭は溜め息を着いた。



『わかりました、あなた方を信じましょう。

その代わり解った事は教えると誓って下さい。

私にも真実を知る権利はありますよね?』



そう言うと司祭はやっと表情を和らげた。