司祭は本棚から埃だらけの蔵書リストを引き抜いた。
『先代の司祭様は解読不可能だから古文書じゃないかと言っておられました。
それを“ヴォイニッチ手稿”だと勘違いしたのかもしれません。
実際に“ヴォイニッチ手稿”を見たことがないのでわかりませんが…
…ほらここです。
1723年にこの書物庫に蔵書されています。』
確かにその蔵書リストによれば題名が“Unknow”と書かれた書物がある。
ニックは顎髭をさすりながら考え込んだ。
『確かに…1723年ってことは約300年前ですね…』
『実物は見る事出来ますか?』
『ええ、ここにあるのなら…』
含みのある言い方に忍は首を傾げた。
司祭は頭を掻きながら申し訳なさそうにこう続けた。
『いや~お恥ずかしながら、どこにあるのかサッパリでして…』
つまり、蔵書リストでその書物があることは把握しているが、場所がわからないという事だろうか…
それはもしかしたら無いかもしれない可能性もある。
ニックは司祭がわざとそう言ってこちらが諦める様に仕向けているのかも…と考えた。
だが、それならこの書物庫に案内したりするのはおかしい。
ふとその時、ある事を思い出した。

