忍は少しげんなりしていた。
打ち合わせと言われ昼からずっとメモを取りながらニコールの話を聞いていたのだが…
『…でね?あそこのパスタは絶品でね~…』
ランチを食べ終わって仕事の話をしていたのは1時間ほどで、その後はこの調子である。
チラッと腕時計に目をやると、すでに4時近かった。
『時間が気になる?』
『あ…いえ…』
そう返事をしてからハッキリ『気になります』と言えば良かったと後悔した。
思わず出た溜め息にニコールはクスクスと笑った。
『君は正直だね。
彼氏と会う約束でもしていたんだろ?』
『…実はそうなんです…
あの!…続きは明日じゃダメですか!?』
そう言うとニコールは時計を見て『もうすぐ4時か…』と呟いた。
『仕方ない。このまま君を独占してたら彼氏に怒られそうだしね。
続きは明日にしよう。』
『すみません…明日から頑張ります!!』
そう言って早々に立ち上がった忍に『ちょっと待って』とニコールが声をかけた。
まだ何かあるのかと再び椅子に座るとニコールは『はい』と鍵を手渡した。
『…あの…鍵はもう貰いましたけど…』
『これは彼にだよ。こっちに居る間は自由に使っていいよ。』
そう言って2本の鍵を手渡した。

