忍がイギリスに入国した日、上機嫌で連絡を待っていた右京は再度打ちのめされた。
「今アパートに着いて荷解きが終わったんだけど…」
「待ってて。今から行くからさ。場所は?」
「あの…それが…ニコールが仕事の打ち合わせを兼ねてランチしようって…」
…あんの野郎…!!
完全にこっちの行動を読んで邪魔しているだろうニックに怒りを覚えた。
せせら笑う彼の顔が目に浮かぶ。
「夕方には終わるだろうから、後で電話するね?」
「仕事でこっち来てんだもんな…仕方ないよ。」
分かったと言って電話を切ってうなだれる。
『ククク…クロウ、君は見てて飽きないな。』
朝から観察していたアランは百面相をする右京に肩を震わせて笑った。
『最悪だ!ニックの野郎…!!』
『あの男は計算高いぞ。
高学歴も伊達じゃない。』
『らしいしな…まさかここまでするとは…』
『まぁ、彼はジョークのつもりだろう。
なんだかんだ言って、クロウの事はかってんだよ。』
右京もわかっているのだが、期待が大きかっただけにその落胆度がデカかった。
アランはシュンとした右京の肩をポンポンと叩いて慰めてくれた。

