ニックは余裕の笑みを浮かべている。
右京が脱力したようにソファに寄りかかり『ああ~!!』と唸り声を上げた。
『ちょっと手伝うくらいしかしねーからな!!
あと、忍には俺が動く事は言うなよ!』
『当たり前だ。俺とお前は直接接点はない…だろ?』
うまいことニックに踊らされている気がしてならない。
もしかしたら全てヤツの計算の内だったのか…?
口笛を吹きながらソファに仰向けになって新聞に目を通すニック…
右京は彼から新聞を取り上げてバシッと頭を叩くと不機嫌そうにP2を出て行くのだった。
翌週の午前中に、忍はロンドンに到着した。
空港で出迎えるつもりだった右京は数日前の電話で『必要ない』という忍の言葉に打ちのめされた。
「なっ…なんで!?」
「なんでって…ニコールが迎えに来てくれるらしいし。それに…」
「それに?」
「ほら、アパートもニコールが仕事用に借り上げてるじゃない?
先に荷解きしたいじゃない?」
そう言われ、渋々納得せざる負えなかった。
「じゃあランチは一緒に取ろう…」
そう約束して電話を切った。

