とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




ニックはこっそり“クロウが侵入してくれれば”と思った。


チラッと彼を盗み見る。


『…俺はやらないよ。』



ニックの仕事を手伝ってもなんの特にもならない。



『しかも下見で神父に顔が知れた。無理だよ。』


『わかってるよ…』



仕方ない。ミス・クロサキに動いて貰って…



『忍に危ない橋渡らすなよ。』






『さっきっから何だ、お前は!思考が読めるのか!?』


『ニックの考えてる事なんて誰でも判る!安直過ぎるんだよ!』



右京の言葉にニックは黙ってふてくされたように口を尖らせた。



『とりあえず牧師にまずストレートに聞いてみる。

もしそれでダメならクロウに頼むよ。』


『だから俺は…』



と反論しかけた時、ニックは右京の目の前に鍵をちらつかせた。



『これ、仕事用に借りてるアパートの鍵。

手伝ってくれるなら…』


『…俺を釣るのか?』


『手伝ってくれるならミス・クロサキにクロウに渡していいって合い鍵預けるけど…』


『…そういう悪知恵だけはすごいな…』



右京とニックの睨み合いが続く。