とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




まったくアランって奴は抜け目のない男だ。



『…勧誘されたか?』


『ああ。俺にも色々やらなきゃいけない事があってね…

手は貸してもいいが断ったよ。』


『そうか…。

しっかし凄いな…』


防犯カメラを取り付けたのもこれに対するものだろう。


一体何をするつもりなのか…



『…知りたそうな顔してんな…』


『…聞いていいのか?』


『別に人間相手に戦争しようってわけじゃない。』



クリスは『安心しろ』と笑った。



“人間相手じゃない”のならアランはさぞこの男を欲しがった事だろう。


右京はそれ以上詮索せず『そうか』とだけ答えた。





本部に入ると待っていたようにニックが『どうだった?』と声をかけて来た。



『日中は人が多い。その間は神父も常に居るだろうな。』


『動くなら夜か…』


『相当暗いと思う。俺は大丈夫だけど…』


『他に変わった所は?』


『聖堂内のマリア像に移動した傷があった。

あの下に何かあるかも…』


『防犯カメラあったか?』


『正面に一カ所、中に2カ所はあった。

まだあるかもしれない。』


ニックは顎髭に手を当てて唸った。



『侵入するのは出来るだけ避けた方が良さそうだな…』


右京だけならまだしもニックひとりではリスクが高すぎる。