とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~




近くで見ると意外に大きい。


その床に引きずったような15センチ程の傷があった。


設置する時についたのだろか?


それとも…



『…』



右京はそのまま聖堂を横切って反対側の壁まで来ると天井を見上げた。


結構高い。上部はステンドグラスが張ってあり、この時間はかなり明るい。


夜は月がないとかなり暗いだろう。



こりゃニックだけじゃどうにもならないな…



『随時熱心にご覧になってますね…?

観光ですか?』



振り向くと皺一つない黒い布に身を包んだ司祭の姿があった。


『まぁ、そんな感じです。』


『フランスやドイツの方が立派な聖堂あるでしょう。』



どうやらまたヨーロッパ辺りから来た観光客と間違われたらしい。



『自分は日本からの留学生です。』


苦笑しながらそう答えると司祭は『またまた~』と笑った。


『いや、本当に…。』


『え!?そうなんですか!すみません、あまりにも綺麗なグリーンアイなので…』


『よく間違われます。実際、そっちの血が混じってるのかもしれませんし…』


そう言いながら視線は天井を観察し続ける。


ステンドグラスからの光が眩しく少し目を細めた時、司祭がポツリと何かを呟いた。