一瞬固まったリサに虎太郎が『どうかした?』と首を傾げた。



『ヒューガ…それは口説き文句よ?』


『え!?そういうつもりじゃ…
…あぁ、いやそれならそれで結果的にいいんだけど…でも、そういうつもりじゃなかったんだ…』



何が恥ずかしいのか、赤面しながら慌てる虎太郎を見てリサはクスクス笑った。



ズリズリと椅子をずらしながら虎太郎に近付くとリサは『ヒューガ』と身を乗り出した。


『なっ…なにッ…?』


『キスして。』


『…それは…今?』


『そうよ。』


『何もこんな人の多いとこじゃなくても…』


『キスくらい街中だろうが人混みだろうがみんなしてるじゃない!』



ムッとするリサに少したじろぎながらそっと顔を近付ける。



『…やっぱり後でね。ここでその気になられたら困るから。』



そう虎太郎が耳元で囁くとリサは不機嫌そうに睨んだ。



『それ…私に言ってんの?』


『リサしかいないじゃないか。』



リサがテーブルをバンッ!!と叩いて立ち上がる。



『そんな態度だから解らないって言うんじゃない!!』



怒って店を出て行くリサの様子を見ていたビジネスマンが『若いね』と微笑んだ。



虎太郎は『ホント世話が焼けるんですよ』と苦笑しながらリサを追い掛けるのだった。