その瞳の色が片方だけ時々赤く光っている…
まるで…悪魔のような…時折真紅に煌めくウリエルの瞳にラファエルは小さく震えた。
…怖い…
ラファエルが感じたのは正に“恐怖”だった。
これが…
かつて同じ熾天使だったウリエルなのか?
近付いて距離を詰めてくる堕天使にラファエルはガクガクと震える脚をゆっくり後退させる。
『…どうした、ラファエル…』
無表情で自分を見下ろすウリエルに言葉を発する事が出来なかった。
突然伸びた腕に思わずラファエルはびくりと肩を強ばらせ目を瞑った。
『俺が怖いのか?ラファエル…』
ウリエルの右手が自分の顎を掴んだ。
血の気が引いて行くのがわかる。
『人間が非力だと見下しているが、お前も大して変わらないんじゃねーか?』
『なっ…!私は…見下してなど…』
『さっき言ったじゃねーか!“たかが人間”と!!
…それが本音だろ?』
『私達が手出し出来ないものを、人間にかなうわけ無いではないか!』
『お前らが何をした!!』
『!?』
…天使である立場の自分達は何をしたのか…
…何もしていない…
何もできないのだ。
痛手を受けるのが目に見えているから。
何も出来ない…
だがこの堕天使はそれをやろうとしている。

