『その男は幼い妹を暴行していたのだ。
幼い妹は泣き叫ぼうとすると殴られ、脅された。
逃げると“デュラハン”が来て殺されるぞと…』
ラファエルは少し悔しそうな表情をした。
『汚らわしい人間だ!自分の欲望を満たす為に妹を騙し、辱めるなんて…!!』
ラファエルは不憫に思った。
ある日、その妹が助けを求めた。
『“あんな兄ならデュラハンに捕まった方がマシ”だと、デュラハンに助けを求めたのだよ。
判るかい!?
死の使いかもしれない精霊に助けを求める彼女の苦しみが!!』
そこでラファエルは男の“歪み荒んだ魂を狩れ”とサリエルを下界に送り込んだ。
『“デュラハン”の様に狩れと言ったら、サリエルは完璧に役目を果たした。
さすがだと感心したよ。』
だがサリエルは優しすぎた。
『泣きながら連れて行ってと叫ぶ妹に手を差し伸べてしまったのだ。
必要以上に人間に関与するなと言ったのに…!』
そこまで話すとラファエルは自分を落ち着けるように、ふぅと息を吐いた。
『で、サリエルを“デュラハン”として下界に追放でもしたのか?』
『私はそんな事はしないよ、ウリエル。』
ラファエルは綺麗な艶のある長い赤毛を靡かせてウリエルに背を向けた。
『君も知っているだろ?人間が愚かな生き物だという事を…』
彼の顔は見えなかったがその声色はとても悲しそうだった。

