黒服の人々が数名ぞろぞろと洞窟内に入ってくる様子が見える。
中央に横たわる男を囲むように集まると何かを話していた。
『話してる事が分かればいいんだけどな…』
ポツリと零したロイの愚痴にアランは『ヒューガ判るか』と聞いた。
『儀式の手順について話してる。』
話の内容からしてシモンズがシャーマン的役割を担うようだ。
『…男が目を覚ましたぞ…』
が、ただ天井の一点を見つめて動かない…
そんな男を気にもせず、黒服の集団は少し離れた位置に膝を着くとなにやら唱え始めた。
その光景は正に魔女そのものだった。
儀式が始まってしばらくすると、中央に横たわった男に異変が起きた。
『まずい…!何かが憑こうとしてる!』
呻きと共に激しく痙攣を起こした男にアランは声を荒げた。
右京は黒く淀んだ空気が洞窟内へと流れ込んでいるのに気付いた。
『何かわかるか!?』
『これは…』
邪悪な気配はあるものの、正体がわからない。
この気配…俺は知っている…?
虎太郎の脳裏にそんな考えがよぎった。
いつどこで感じた事があるのか思い出せない。
だが、このまま事態を見過ごす訳にいかないのが現状だ。
『非常事態だ。
儀式を中断させる。』
虎太郎の様子を見てか、右京はそう短く言葉を発すると、サングラスの奥の瞳をやや光らせた。

