神に仕える者として、天使達は幾つかの誓いを立てていた。
その一つに“嘘、偽りなく本心を語る事”という誓いがあった。
仕える神によっては大した罪にはならないが、比較的虎太郎…ことハニエルはその点に関して忠実だった。
それは天使にしたら当たり前な事で、そういう意味では右京は人間じみていると言えた。
以前、人格がまだ分裂していた頃、右京ももう一人の自分と“嘘”について口論になった事がある。
今思えば“ウリエル”の意見も納得出来る。
だが、虚偽を正当化する人間の意見にも納得出来る。
どちらが正しいとか、そんなのは結局のところ誰にもわからないのだ。
だから右京は別段虎太郎が本心を語った事を間違えだとも言わなかった。
ただ、単に“意見が違うだけ”である。
『正直なのはいい事だけど、付くべき嘘もあると思うぜ?
まぁ、俺個人の意見だがな。』
右京がそう諭すと虎太郎は『付くべき嘘か…』と呟いた。
『けど、それは自分で学ぶべき事だと思うぜ?
なんで彼女が怒ったか解るだろ?』
『ああ…そうだな。』
ロイの言葉に頷くと虎太郎は『努力するよ』と笑った。
『それはそうと…動きあった?』
『ああ…それなんだけど…』
と、ロイは『あれ見ろよ』モニターを指差した。

