ポケットに入れていた手を出すとゆっくり転がったそれに近付いた。


ギギギ…


奇妙な鳴き声を発しながらそれが立ち上がった所を男は蹴り飛ばした。


脇の壁に当たりやがて砂になり消えた。


ギギギギギギ…


鳴き声はまだ止まない。
それどころか更に大きくなった。

それに気付き、男は振り返った。


「おい…話が違うじゃねーか…」


至る所の闇から無数にうごめくそれに男は愚痴をこぼした。


「…面倒だ。一掃する。」


そう言うと男の周りに渦巻いていた風がブワッと地面を這うような動きをした。


…と、突然もの凄い勢いで風は波動となり駆け巡った。


うごめいていた闇が砂と共に消えた…


男はフードを取ると月明かりで銀色に輝く髪をかきあげた。


「完了した。撤収する。」


そう言うと男は人間とは思えない跳躍をして、建物から建物に飛び移り姿を消した…