とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



空を切る刃物は右京に向かって繰り出される。

少し重心をずらしてナイフを持つ腕を体と二の腕で挟み込むと、ギリギリと鈍い音を立てて一気に捻りあげた。


叫ぶ間もなく冷たい地面に押さえ込むと、右京はナイフをもぎ取った。


「腕、痛むようなら医者に診てもらえよ。

ナイフは没収だ。」


そう言って男を解放するとよろけながら忍の足元転がった。

男は忍と目が合うと不敵な笑みを浮かべ…


「ぇ…?」


ガシッと掴むと羽交い締めにした。


「俺の女に触るな…」


怒りで右京の目の色が一瞬変わった。

が、次の瞬間、忍が先にキレた。


「…もち悪い!…」


思いっきり足をヒールで踏みつけ、怯んだ男の腹に肘鉄を食らわした。


「…しっ…忍!?」

「気持ち悪いって言ってんのよ!!」


うずくまる男を睨み付け、まだ向かって行きそうな勢いに右京は慌てて忍を止めた。


『…やっぱりクロウの彼女だな…』

『シノブ、可愛いのにスゴい!!』


右京はしばらく見ない間に、まさかここまで強くなっているとは思わなかった。


「女を盾に取るなんて本当にクズね!」

「うっ…うるせー!女のくせに!」


怒りでわなわなと震える忍は、悔しそうに右京を見て瞳を潤ませた。