自分に興味を持つニックにニヤリと笑うマモンはしわがれた声でこう言った。


『おぬし、金は好きか?』

『…まぁ…好きだけど?』

『どうじゃ、わしと契約せんか?

力を貸すぞ?』


そう言ってヒッヒッヒッと笑うマモンに右京は思いっきり拳を振り下ろした。


鈍い音と共に頭を抑えてのたうち回る悪魔に、ニックは憐れみの眼差しを向けた。


『マモン…相変わらずだな…』

『調子のいい所も相変わらずだね…』


そう言う虎太郎と右京を交互に見ながら、慌ててひれ伏した。


右京はマモンの背中に片足を置くと逃げられないように抑えた。


『アラン。マモンを締め上げて“送って”いいか?』

『君に任せるよ。

こちらに連れてこられても困るしね…』


ニックが船を走らせると右京は『さてと…』とマモンを鋭い眼差しで見下ろした。


『なっ…なんで懺悔の天使がここにおる!?』

『貴様を業火で焼くためだ…』


ニヤリと笑う右京にすっかり震え上がったマモンは動けなくなった。


『…でもその前に聞きたい事がある。

騒ぎを起こしたのは誰の指示だ?』

『…決まってるじゃろ?“皇帝”じゃ…

ワシはただイギリスで好きに暴れて来いと言われただけじゃ!』

『イギリスで?』


その言葉に虎太郎は眉を寄せた。