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「…あたしもさ、確信があるわけじゃないのよ。本人に聞いたわけじゃないし。」
どこからともなく登場した、いかにも「外国産です」って雰囲気のチーズとサラミを肴に、赤ワインを味わう。サエさんは「うーん、この渋みがたまらん!」と時折お酒の感想をはさみながら、ぽつぽつと話してくれた。
「本人、に?」
核心部分に触れる。
サエさんには、もう特定の人の顔が浮かんでいるんだろう。
そのひとの、かおは?
どんな、ひとですか。
「ふふっ、もうサラちゃんは大体の見当がついてるんじゃないの?」
「…は? いやっ、そんなの、分かるわけないじゃないですか!」
、、、、、
てか、そんなわけないじゃないですかっ!
サエさんのにんまりした笑みに、
ボン!と彼の顔が浮かんじゃったけど。
いやいや。
そんなわけ、ない。
、、、
あの人なわけ、ない。
サエさん、それはナイよ。
ナイナイ、ナイナイ!絶対、無い!!
「さーら、ちゃん。」
ブンブンと頭を振り回すあたしを宥めるように、サエさんは言う。
「私はね、サラちゃんには自力で彼に辿り着いてほしいのよ。名前を言うのは簡単だけど、それは私がサラちゃんに、勝手に言っていいことじゃないわ。」
「サエさん…」
「ねえ。あと、2週間しかここにいられないんでしょ?いまはこんな風に毎日トウマくんと一緒にいられるけど、こんな日々は、もう二度とないかもしれないんだよ。逃しちゃ、ダメよ?じゃないと…私みたいになっちゃうわよ。」
「ん?何、言ってんですか…?」
サエさんが、クーッと一気にグラスの赤い液体を飲み干した。
“プハーッ”、という
おおよそワインには似つかわしくない音が続く。
「ああ、あそび上手なふたりの…たわむれ劇と笑ってよ…」
歌うようにそう言って影を背負うサエさんは、不謹慎だけど、なんかもうめっちゃカッコよかった。そのまま、ハラハラと涙を零しながら昔語りでもしてくれればさながら映画のワンシーンのよう(ただし昭和)だった、のに。
…聞きたかったな、サエさんの過去の恋愛とか。
「わーっ!サエさんっ!?」
“…ガーッ、ゴゴゴ…、”
そのままベッドに突っ伏して大の字になったサエさんは、凄い勢いで眠りに落ちていった。大地を這うような、イビキとともに。(幸い、歯軋りはしていなかった)



