「“トンガリ”さんって…だれ、なんですか?」
「サラちゃん…」
サエさんはしばらく沈黙していた。何て答えればいいのか、悩むような表情で頭を何度も肩の上で回していた。
「さて、どーすっかなー…」
そんなちいさな呟きが、サエさんから漏れて聴こえた。
知りたい…でも、怖い。
サエさんの一挙手一投足に、ビクっとなる。
知らないうちに、足が震えていた。
…知りたい。聞きたい。
でも聞いちゃったら、知っちゃったら、もう元いた地点には戻れない。
自分が、どうなるかわからなくて、怖い。
言って。 …言わないで。
ぐちゃぐちゃの気持ちのまま、あたしはサエさんをただ見つめるしかなかった。
「バカねぇ…迷ってるなら、聞かないでよ。」
「え?」
「言って、いいの?」
目を細めてそう言いながら、サエさんは立ち上がって窓辺のテーブルに置かれたボトルを手に取った。
「なんか、ビールって気分じゃなくなっちゃったわね。ワイン、開けよっか。サラちゃん、付き合える?」
「あ、はい。少しなら…」
「よし、いい返事だ。今夜はゆっくり飲みましょ。たまには、オトナモードもいいわよね。」
ワイングラスを片手にばちん★とウィンクしたサエさんは、惚れそうなくらい男前でカッコよかった。



