S・S・S



「あれ、早いねサラちゃん。」

「わっ!大崎くん…」


誰もいないと思っていたのに、大崎くんがミキサー卓の下から出てきた。


「びっくりした。ミーティング8時半からでしょ?何してるの、こんなに早く。」

「だって、きょうサラちゃんの復帰戦でしょ。機器に異常がないかチェックしてるんだよ。」

「ええっ?わざわざこんな早くから??」

「…最近、モモがミキサーやると、アイツ適当にメチャクチャするからどうも調子悪くてさぁ。きょうも、立ち上げから僕がやっておかないと心配で心配で。それに、久々に喋るのにまたなんか変な細工とかあったら、イヤでしょサラちゃん。」

そう言って、何てこと無いって風に爽やかに微笑む。



…ああ、そうだった。

大崎くんは、こういうヤツだ。

自分に喋りの才能がなくても、とにかく良い番組を作りたい、みんなを楽しませたい、放送に関わっていたい、という熱意だけは誰にも負けない。だから、こういう事前準備の大切さをよく分かっているし、機材も大切に扱う。


大崎くん、モモ、あたし。

新人3人のなかでも、プロ意識の高さという面ではダントツ1位だ。あたしが烈火さんだったら、まず第一に欲しい人材だって思う。
ここから局へ、新人として迎えるのに、彼ほど有能な人はいないだろう。
大崎くんこそ、4月からのNIS-FM新人起用枠を狙っていたはずなのに。


…その座を奪った、あたしのために?


「…ありがとう…大崎くんって、ほんとイイ奴だね。」


あたしがちょっとウルっとなってしまったのを見て、大崎くんは軽く吹きだした。