ゲレンデの中腹にあるレストランで遅めの昼食をとる頃には、あたしは左右のターンが出来るようになっていた。もちろん、板はハの字だけれども。固定されて痛かった足も、滑っていると不思議と痛くない。むしろ、痛いのは…
「お前、あした筋肉痛になってると思うぞ。特に下半身。無駄な力入れすぎだからな。」
「うぅ…っ。既に太ももがプルプルしてるぅ…。楽しくてつい…」
初めてのスキーは思っていたよりずっと簡単で、(トウマの教え方が上手いのかもしれないけど)すごく楽しかった。
柔らかい雪の山を膝を曲げて越えていく感覚は、ちょっと波に乗るのと似てるかもしれない。1つ越えたらハイ次、って感じでどんどん斜面を下っていける。そしてなにより、スピード。割と平坦なコースでなら板をそろえてスピードを上げられる。冷たい風を頬で感じながらヒューッと滑る感覚が、とても気持ちよかった。
「うん、でもスキーって、たのしい!ありがとう、トウマ。」
「そりゃ良かった。俺も誰かに教えるのは久しぶりだからな。」
「久しぶり??って…」
「言ってなかったか?俺、イントラの資格持ってんの。」
イントラ…?
それって、インストラクターのことですよね?
え!? 指導者ってこと??え???
「トウマ、スキーを教えてたの?」
「アメリカにいた頃は雪山も近かったからな。冬の間はスキーくらいしか娯楽もないし。結構やってて、日本に来てDJの仕事が軌道に乗るまでは、小銭稼ぎによく来てたんだ。とくにこの辺のゲレンデには世話になったな。」
「そうなんだ…そういう話、初めて聞いた。」
もっと、教えて。
もっと、聞きたい。



