「罰なら、もう十分受けてるしな。お前、奏たちに別れの挨拶も出来なかっただろ。あの子、帰り際にずいぶん気にしてたぞ。」
「あ…!!」
そうだ。あたし、すっかり…
奏さんも明ちゃんもずっと白川に滞在してくれるような気でいたけど、彼らは遊びに来ただけだったんだ。灯歌ちゃんが服を貸していたくらいだもの。長期滞在の用意なんてしてるわけないんだわ。
「もう、帰っちゃったの?」
「ああ。スノボを少しやって、その日の夜に奏の車で帰って行った。あんなに嬉しそうなあいつは初めて見たな。」
「そっか、仲良しで帰ったなら何よりだけど…最後に挨拶くらいしたかったな…けど、」
1日の夜ってことはあの騒動の真っ最中だ。シュンくんの、…
ぶるり。
悪寒が背中を這う。
やだやだやだ!もう思い出したくもない!!
思わず首をブンブン振ったあたしを宥めるようにトウマが言った。
「そのうち、また会えるさ。必ずな。」
「うん…。」
「ああ、それから。お前に伝言だ。あの大槻明ちゃんから。」
「え?なに??」
「“きっと、大丈夫。”と、伝えてくれ、と言われたぞ。そう言えば多分伝わるから、と。何のことか分かるか?」
「………!」
“きっと、大丈夫”…って?
明ちゃん…?
年越しライブのとき、明ちゃんと話した内容が頭の中に蘇る。
『違うよ!好きなのはあたしだけで…』
『そうなんですか?お似合いなのに…』
……明、ちゃん。
最後に残してくれたメッセージを。
しかも
それを、トウマからあたしに伝えさせてくれたんだね。
…ありがとう。
なんか、サプライズでプレゼントをもらった気分だよ。
“きっと、大丈夫。”
「…えへへへっ」
「は!?なんなんだお前、急にニヤニヤしやがって。」
「なぁーん、でも、なぁーい。」
「…気持ち悪い…」
「ちょっと!それは言い過ぎだよトウマっ!」
…でっかい、エールをもらってしまった。
奏さん、明ちゃん。
また、会おうね。
次に会う時は、もう少し…色々、成長していたい、です。(で、できればあたしもあなたたちみたいにこの隣のオトコとカポーになってたりなんかしてたりなんかしていたいなってーーーなーんちゃーってーーー!!)
◇
30分ほど山道を走っただろうか。車は大きなゲートをくぐってどこかの駐車場へ入って行った。
施設の入り口には【白川スターゲイトスキー場】とある。
「スターゲイト…!」
「お前、こっち側のゲレンデは来たことないだろう。」
そう。
あたしたちが普段いる白川高原スノーリゾートと、ここ白川スターゲイトスキー場は同じ「白川岳」という山にある。
山頂をはさんで西側の斜面と東側斜面に分かれている、いわば兄弟ゲレンデだ。
ちなみに、山頂で両ゲレンデは繋がっていて行き来自由になってるんだけど、行き来する人は多くない。上の方は上級者向けだし、共通リフト券にするとその分値段が高くなるからだ。両方を行き来するのは、ある程度の上級者で、ここに2日以上滞在する人くらい。
その、山頂を挟んで反対側のゲレンデで、…何をするんだろ?



