「…お前、大丈夫、なのか?」
あたしの質問には答えず、片手はハンドルを握ったまま、もう片方の手であたしの頬にそっと触れて、トウマはそう聞き返してきた。
頬が、熱い。
“だいじょうぶ”… ?
… あぁ、そっか。そうだった。
「あの、迷惑をかけて、ごめんなさい。トウマにも、DJブースにも。」
あの騒動から、まともに会話をしてこなかった事を思い出した。トウマはDJブースのヘッドとして、今後の対応について野本さんと何度も協議しなくてはならなかったんだ。同じようなことを起こさないための対策やルール作りを。通常の業務だけでも大変なのに、放送を終えた後の時間もゲレンデ側との会議に割かなければならなかったはずだ。
…あたしがホテルに篭って暇だ暇だと文句を言いながら映画を観たりプールで泳いだりしてる間も、トウマは多分、あたしがゲレンデに残れるように、交渉してくれてたんだ。
心配、して、くれるんだね。
「…ごめんなさい。」
あたし、ほんとうに、何をやってるんだろう。何をやっても、迷惑にしかなっていない気がする。何をやっても…
「ダメだ……あたしなんか死んじゃえばいいのに…っ!」
3日間の引きこもり生活は、あたしをネガティブ番長にするには十分な期間だった。
両手で頭を抱えて俯いたあたしの耳に、ふっ、と息の漏れる音が微かに届いた。
「トラブルメーカーってのも、ひとつの才能だからな。そういう意味では、お前は天才だと思うぞ。」
それがいつもの冷たい声なら。
あたしは立ち直れなかったと思う。
だけど
それを発したトウマは
柔らかく、笑っていた。
あたしも
あたしのミスも
全てを、包むように。
そんな風に、許してもらえると思っていなかった。
そんな風に、受け入れてもらえるとも。



