キダさんの語りかけるような歌声が、静かに空気を支配していく。
こんなに純粋な想いを、こんなに美しい形で、こんなに心震わせる歌にする、なんて。
奏さんはすごい。
フロアにいるお客さんも、ふと手を止めて聴き入っていた。目を閉じて、曲の世界に浸っている人も。
ゲレンデ中が、一瞬時間を止めてしまったようだった。
曲のラスト、後奏部分にそっと乗せてトウマが喋り始める。
『この曲、とある人の想いがつまった曲なんだそうだよ?』
これも、打ち合わせの通り。
『さぁ、これ、誰が書いたんでしょうね…?』
トウマから、奏さんへの優しいサイン。
もう、あたしの言葉は要らない。
「…俺、だよ」
明ちゃんの目が一際大きく開かれる。
「明…」



