S・S・S




マイクを渡すと、奏さんは少し緊張した面持ちで言葉を発した。


「江口奏です。学生兼趣味でバンド組んでます」


明ちゃんは、まだ事態を上手く飲みこめていないようだった。
どうして自分の隣にいる人がマイクを持ってしゃべっているのか、そしてそれが館内のスピーカーからリアルタイムで聴こえてくるのか、全然分からない、といった表情をしてる。

そしてここで、一瞬の隙間を縫うように、絶妙のタイミングで曲が流れ始めた。この挿し込みのタイミング、本当に心憎い。さすがトウマ、というしかない。


少しだけ、ドラムの主張が伝わる前奏だった。

それを合図に、奏さんが言葉を続ける。



「とりあえず、この曲聞いてください。」



それは以前、深夜のロビーで聴いた、あの歌だった。

身体全体を隅々まで流れて、覆って、揺さぶっていく、あの衝動だった。