「ふーーん…」
上から見下ろされる格好のあたし。
注がれる視線が、痛い。
あの、そんなに他人のことジロジロ見るの、失礼ですよお兄さん。
ってゆーか…、寒い!
気温マイナス10度とかじゃないのこれ。
薄着で、長話してる場合じゃないってば。
「あ…わり。寒いよな、ここ。これ、羽織ってて。」
ぶるりと震えたあたしに、そう言ってバサッと肩に掛けられた黒の革ジャン。
硬くて、温かくて、重かった。
そして、同時に中から現れたのは、筋肉のついた力強い二の腕。
――…うわ、オトコノヒト、だぁ…
「悪ぃんだけど、駐車場の場所教えてくんない?ここ、案内板の電気消えてて。」
「あぁ、はい、えっと…」
簡単に説明してあげると、「どーも。」と爽やかな笑顔を見せて、彼はまた車へ戻っていった。
「ソレ、俺が戻ってくるまで着てていーよ」という有難い一言と共に。
「―…ってか、あの人、タンクトップで雪道歩いて戻ってくるの?」
思わず呟いたあたしの目に映ったのは、走り去る車の後ろに書かれた“XTRAIL”の文字。
残ったのは、不可解な疑問。
「…なんか…でも……あの顔、どっかで見たこと、あるような…」
どこで、だったのかな。
常連のお客さん、なのかな。
でも、あたしの声聴いて「もしかしてDJ?」って聞くってことは、常連さんじゃないしなぁ…。
記憶の糸を辿りながらロビーに戻ると、さっきまであたしがいたはずのソファに、思いがけない人物が座っていた。



