―…何か事情がよく分からないど、大丈夫かな…
遠ざかっていく彼女の後姿を見ながら言い知れない不安を感じていると、トウマが携帯を片手に戻って来た。――…苦虫を噛み潰したような顔をして。
「―…ったく、アイツは――…って、オイ、なに突っ立ってんだ2人とも。この曲、そろそろ終わりじゃないのか?」
気付いたら、中継前の曲が残り1分を切っていた。
「わわっ!マズイ、灯歌ちゃん、戻るよ!」
「は、はいっ!」
「――…おい、サラ。」
「へ?」
戻ろうとする身体を、瞬間引き止めて。
トウマが、あたしの頭を軽く撫でながら耳元で囁いた。
不意に近くなった距離と同時に鼻先を掠めた甘い香りに、心臓が跳ねた。
「さっきの―…満点だ。ヤラれた。」
「―…トウマ。」
「ここで聴いててやるから、この後もがんばれよ。」
―…また、あの笑顔だ。…こんなに近くで笑うなんて、反則だよ。



