S・S・S



それは、俺も不思議な感覚だった。

どうして、こんなに安藤のことが気に掛かるのか。


彼女は、素人だ。

大学の放送サークルに所属している訳でもなければ、クラブでDJをしている訳でもない。

ただ、この3回のオーディションの間でさえ、見事な成長ぶりを見せてくれていた。



伸びやかな声質
リズム感のある話し方
ふと気を抜いた時に漏れる息遣い


その全てに、惹かれた。



これからどれだけ伸びるかは未知数だ。
とんでもない、大物になるかも知れない。



だから。

この手で、育ててみたいと思った。
その、一心だった。




「珍しくご執心だなぁトーマス。ま、現場を仕切るのはお前だ。そんなに言うなら、安藤の件については、検討する。それと、あとでちょっと俺のデスクに来い。」


「……はい。」




そのあと烈火さんに言われた一言を

俺は、長らく忘れていた。


【くだらない、取り越し苦労】

気に留める余地すらない、たわ言だと思っていたからだ。






―――…





「トーマス。本気で育てるつもりなら、安藤サラに手を出すなよ。」






~DJ烈火がお届けするNIS-FM劇場~
【其の壱】~安藤サラに、手を出すな~【終】





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――――――…・・