乙女ちっくな、このアパートに帰って来た私は。

たまには。葵ちゃんをもてなそうと、デザートのプリンを作っていた。

本当はご飯したいんだけどね。きっと今夜も葵ちゃんがご飯を持って来てくれるし。

だからデザートにしてみたんだ。

"ふんふんふふふ~ん"

ダメだ。
鼻歌が出ちゃう。

私はいつもそう。
恋をすると目の前しか見えなくなっちゃう。

当たってくだけろタイプなのだ。

それで。
何回失敗した事か。
私はニヤける顔を引き締めつつ、

"今回は慎重になるぞ"
と決意した。

夜8時。
いつもならとっくに現れる葵ちゃんが今日は来ない。

今日は来ないのかな?

冷蔵庫にプリンが冷えてるのにな。

その時、メールの着信があった。

『連絡が遅くなってごめん。今夜は行けません。ちょっと立て込んでて、当分遊びに行けないかも。オレがいなくてもご飯はちゃんと食べろよ。愛しの葵ちゃんより。』

愛しの…って。

え?
今日来ないの?
当分会えないの?

何で?
忙しいって普段何してるの?

私は彼の事を何も知らないんだ。

何だか悲しい。
失恋した訳じゃないのに、涙が出て来た。