「ピッタリー‼」 意思のない細い指を、折ったり曲げたりしてみる。 左手の薬指に輝くリング。 「奮発したんだぜ。小遣いかきあつめて、瑞穂にちょい借りて。合格祝いに金くれって言ったら、あいつ殴りやがんの」 殴られた頭を撫でる。 「まだ合格してねーだろ‼て。だから出世払いってことでな」 返事のない陽菜に、俺はずっと話しかける。