訊ねられた40代ほどの女は、重い口をゆっくりと開く。

「彼女は今27歳だけど……忌み子なんだよ」

「!」

 ベリルはいぶかしげに眉をひそめた。

「エオスと瓜二つでね。エオスと同じ力も持っているんだ」

「ほう……」

 ベリルの目の色が少し変わる。

 この町に来る前にエオスについては調べていた。

 天の神ウラノスの息子、ヒュペリオンの娘にして暁の女神。

 その美しさは、

「サフラン色の衣装」「雪の瞼」「薔薇の指先」と形容される程だ。

 愛と美の女神アフロディテとの痴情のもつれで、人間の男を誰彼構わず愛する。という罰を与えられてしまう。

 ある意味、どっちもどっちな事だったように思うが……先に罰を与えられてしまったエオスは不運でしかない。

 つまりは、その罰を受けたエオスが人間の男をさらい、その子どもたちがこの町の祖先。という事だ。